Apr 30, 2011

転換期、そしてフリルポシェット



キリンジの
「雨は毛布のように」

何とも優しい雨の表現です。
毛布の様な雨なら、外出の煩わしさも多少は軽減しそうです。

そんな雨にもう一つ、
tortoagoのバッグを持つことで
さらに
その煩わしさが少なくなれば、
作り手としてこれほど嬉しいことはありません。

ところが、革は雨や湿気が大敵です。

そこで撥水加工が施された革を使用している
こちらのバッグの紹介です。
(※防水加工ではなく、またその効果も永久ではございません)

先日もご紹介したフリルポシェット。
その製作工程をかいつまんで説明します。


帯状の革を直線で裁断します。
それぞれのパーツの右(直線)側は約1.3m/m幅で薄く漉いてあります。
この段階でコバ(断面)には色を付けておきます。

目分量でタックを取りながら仮縫いのミシンをかけます。

3枚と2枚で重ね、さらにミシンで仮縫いします。
小さい方のフリルが顔側にきます。

裏側は、フリルの裏面が直接服に触れる面積を少なくする為に
当て革を付けます。(革の裏は少しザラザラするので)


上の写真の状態ですでに厚みが5m/mを超えています。
(分かりやすく黒い革で)


上記のフリルを、2cm幅の革テープで表裏から挟み一気に縫います。
フリル部分の厚みはトータル8m/m程と相当厚くなります。

2cm幅の革テープのコバ(断面)も着色し、金具を取り付けたら
ショルダー部分の完成です。

フリルポシェットの完成形。
時間が無くてバッグ本体の製作過程は撮影できませんでした。

モノ作りをされている方から、
「フリル部分のパーツは曲線で裁断しているのですか?」と
たまに聞かれますが、曲線を直線にすることで生まれるフリルは
もっと緩やかな仕上がりになってしまうので、直線で裁断して
しっかりとタックをとっていきます。



元来僕は、トラッドやクラシカルなデザインが得意で
好んでその様なテイストのバッグを製作していたわけですが、
ある時からその枠を取っ払って、もっと面白いデザインに取り組みたいと
苦悩した時期がありました。
大手の様に資金があるわけでもなく、オリジナルの革や金具を
制作できるほどの生産数も無いので、ハンドメイド+αのオリジナリティーを
激しく欲していたのです。

tortoagoの様な小さなブランドは正真正銘の隙間産業です。
他の業種でも同じかもしれませんが、その規模ゆえに
より他との差別化が必要になります。

あらゆる隙間を覗き

そしてある時思いあたりました。
「肩に象徴的なデザインを施したバッグは見た事がない」と。
それから毎日試作を繰り返し、その厚さのせいで
何十本ものミシン針を折りながら、ようやく辿り着いたのが
このフリルバッグです。

決して大袈裟な話ではなく、このデザインを思いつかなければ、
おそらく数年前にtortoagoは消滅していたと思います。

大手の生産数とは全く比べ物になりませんが、独立以来
数百のデザインを考え、また千数百個のバッグをコツコツと
作ってきた僕のキャリアにおいて、そんな理由でこのフリルデザインは
特にかけがえのない物なのです。




あ~、熱く語っちまった。
只今早朝5:55(作文時)








初志貫徹、の告知。

date:5.10tue-15sun
time:12:00-20:00
(節電の為19:30終了の可能性があります)
http://www.hpfrance.com/Shop/Brand/soup_of_he_r_art.html

どなた様もご来場いただけます。










Apr 29, 2011

良い革って何?


革を扱う仕事をしていると
しばしば問われ、また考えさせられる素朴な疑問。

値段が高い革が良い革か?
インポートレザーが良いのか?

僕は決してそういうことでは無いと思っています。
いくら高い革を使用しても、そのデザインや制作方法に
適していなければその価値は半減してしまいますし、
例えば高額なイタリア製の革でも、日本の気候に適さず
激しく色落ちするモノもあります。
値段や生産国ではなく、適材適所が大切です。

ただ、セオリー通りのことをしていても
面白い発見が減ってしまうという点において
作り手側としては非常に悩ましい問題なのですが。

誌面などでよく目にする、革にまつわる言い回しに、
「経年変化」
「アジ」
「ヤレ感」
「一生モノ」
等々ありますが、これらの表現は基本的に
手入れをして得られるものだと思っています。

まぁ僕自身も、バッグはそれほど手入れはしませんが、
靴の手入れは怠りません。

バッグの製作中、気が散って集中できないときや
イライラしている時など、靴を磨くと集中力が増し、気持ちも落ち着きます。

手入れのし甲斐が無い素材、デザイン(悪い意味ではなく)の靴も
所有していますが、中には手を掛けただけ応えてくれる素晴らしい革の靴もあります。

そんな一足。
マルタン・マルジェラの2008年S/Sコレクションに出ていた
切り込みショートブーツ。
妻の愛用品で頻繁に履いています。

妻の靴の手入れも僕の担当なので、頃合いをみて磨いています。
購入した当初から、どのように変化して行くのか楽しみにしていましたが、
見事に期待に応えてくれています。

新品の時も格好よかったのですが、
ガンガン履いて、ちゃんと手入れをすると
これぞ革という美しい表情を楽しむことができます。

これって男の発想でしょうか?

何はともあれ
お手入れ以前に、先ずは気に入った革製品は
ガンガン使用することです。
革は、使い手の性格が如実に表れる
とても興味深い素材ですから(笑)



そしてこのブランドの靴も。
近日新作のご紹介をします。









まだまだ予告。

date:5.10tue-15sun
time:12:00-20:00
(節電の為19:30終了の可能性があります)

どなた様もご来場いただけます。










Apr 28, 2011

irose



irose (イロセ)

日本語の古典で「兄弟」を意味するイロセは、
その名の通り兄弟で経営するバッグブランドです。

デザイナーの高橋 源(以下源ちゃん)、高橋 大(以下大)は
僕の10年来の友人でもあります。

元々僕は源ちゃんと一緒にブランドを設立する目的で、約10年前に
下町は門前仲町で1年ほど生活を共にしていました。

当時は各々バイトをしながら、空いた時間で創作していたわけですが、
毎晩のように、空が白み始める時刻まで夢を語り、
夢を追い、夢に敗れながらも究極に楽しく、忘れることのできない
素晴らしい時間を過ごしました。

後に僕が門仲を離れ、ひと足先に独立するのですが、
そこから三年後の2003年に源ちゃんは弟の大とiroseを設立しました。

決して喧嘩別れをしたわけではなく、その頃はやはり生活をしていく為に
より多くの時間をバイトに費やさなければならない現実があり、
次第に生活のリズムがばらばらになっていったのです。

今でも門仲で過ごした日々を思い起こすと、
ほんのり甘くて、ドキドキ酸っぱい、
あぁ、あれはまさしく青春だったなぁと郷愁を感じずにはいられません。


思わず遠くを見つめる眼差しになり、
フッと視線を戻した手元に


昨年秋に注文していたiroseの名刺入れが。
先日、待ちに待ったこの商品が僕の元に届きました。

何故同業なのにと思われるでしょう。

僕は独立してから今日まで、まともに名刺入れも持った事がない
出来損ないなんです。
勿論過去に何度も自身で名刺入れを作っては使用してきましたが、
その度に友人にあげてしまい、社会人としての基本中の基本アイテムが
定着せぬまま今日を迎えていたのです。
ならばお金を払って、tortoago以外の気に入ったモノを手にしようと、
iroseの商品を購入したわけです。
ゴートレザーの光沢が美しい名刺入れ。
高齢の職人さんが制作しているらしく、同じ職人として
大先輩に敬意を表して、ボロボロになるまで
大切に使わせていただきます。


進む道は違えど、
独創的な発想で楽しませてくれるiroseの活躍に
いつも注目し、また励まされもするです。








ITSUMOの予告。
まだしつこくない。

date:5.10tue-15sun
time:12:00-20:00
(節電の為19:30終了の可能性があります)

どなた様もご来場いただけます。










Apr 26, 2011

PLUS ONE






24日
ジュエリーブランド

chigo

の展示会に友人のMちゃんと行ってきました。
今回のコレクションも格好よかった!!! !! !
バッグなどよりずっと小さなモノの中に、ギュッと凝縮されたパワーは
見ているだけでワクワクします。




新作ではないですが、僕は今回「Hello I LOVE YOU」のバッヂを購入しました。

シルバーにピンクゴールドメッキ。
3つのOの中にダイヤが光る、以前からずっと気になっていたバッヂ。



こちらは妻のモノ。
つまり
オレのモノ。


デニムジャケットにも、ライダースジャケットにも
オイルドジャケットにも、plus oneの輝きを与えてくれる
僕の宝物です。











今日初めて見たあなたの為に。

date:5.10tue-15sun
time:12:00-20:00
(節電の為19:30終了の可能性があります)

どなた様もご来場いただけます。










Apr 25, 2011

ハルイロ・ポシェット



友人知子ちゃんよりオーダーいただいた
春色Pochette。

ピンクのリザード型押しと赤のスムースレザーをコンビで。
甘くなりがちなピンクもどこか和菓子の様な絶妙な色合いで、
とても雰囲気良く仕上がりました。

blogのトップ画面にも使用しているこちらのポシェット、
10年ぶりに制作したので、今の技術を活かすべく
新たに型紙をおこしました。

全体的に曲線を意識した、優しいラインが特徴のバッグです。





バッグの顔になるタッセル。
制作工程の一番最後に取り付けるこのパーツは
バッグに表情を与えます。

12m/mのポンチで抜いたパーツを隙間無く並べてフタの装飾に。
小さなパーツですが、一個一個コバ(断面)を着色しています。

ぷっくりと綺麗に形が出たコーナーパッチ。

表と裏で2色使いの細幅ショルダー。

あえて重厚感のある金具を用いて。


昨年ブランド立ち上げから10周年を迎え、11年目の新たなスタートに
10年前に制作したこのバッグのご注文をいただいたことに、何かの縁を感じます。
知子ちゃんありがとう。









date:5.10tue-15sun
time:12:00-20:00
(節電の為19:30終了の可能性があります)

どなた様もご来場いただけます。










 

Apr 24, 2011

例えるなら



例えるなら

第一声で心を揺さぶる

永積タカシの声音のような

そんなバッグを

つくりたい。






ということで、
2011A/W展示会のDMが出来上がったので、
今日から展示会が終わるまで、
しつこく
しつこく
このご案内を投稿の度に貼り付けていきます。

「Urban Rambler」
直訳すると、都市ぶらぶら歩き人(笑)
その手元にあるのがtortoagoのバッグであって欲しいという願いを込めて。

つい先日展示会にテーマは設けないと書きましたが、
その舌の根の乾かぬうちにテーマ風なこちらの文字を
堂々と、ど真ん中に掲げてみました。
まぁ、テーマとは呼べないようなものですけど。



今回のDMデザイン。
僕にしては珍しく原色使いです。
分かる人には分かる、Dick Bruna風。


date:5.10tue-15sun
time:12:00-20:00
(節電の為19:30終了の可能性があります)



デザインしてくれたTAKE、
テーマの英訳をしてくれた、ロンドンのOKA、ニッチ
ありがとう!











 

Apr 22, 2011

おさらい PartⅣ


本日、おさらいの最終回。

次回の展示会は、ワンシーズンお休みをいただいたこともあって、
サンプルの制作期間を2ヶ月取る事ができましたが、
この2010A/Wの時は一ヶ月しか取れなかったので、
その短い期間を考えれば、よくこれだけの数を揃える事ができたなぁと
我ながら驚きです。


それではご覧下さい。



上質なムートンを使用したミニトートバッグ。
ハンドルはオーストリッチの型押しです。
ムートンは扱った事がなかったので、初の工場生産でした。
ハンドルのみ自分で制作しています。

ムートンは、今後自分で制作してみたい素材の一つです。




tortoago最大の人気シリーズ。
このバッグに関してはブログを始めるにあたり、真っ先にご紹介したかったのですが、
あまりに思い入れが強すぎて上手く文章にできずにいます。
フリルバッグのみで紹介しようとの計画も、流れ上止むを得ず載せてしまいました。

フリルバッグに関しては、
また改めてご紹介します。

このバッグは、幾つかデザインがあるフリルバッグの最新作です。
次回もこちらは継続します。
長めのワンショルダー。

ショルダーとバッグの前後を付け替えてクロスボディに。
写真は無いですが、ショルダーは短くもできます。

チェーン部分を外してクラッチバッグ。


以上で2010S/Sの商品紹介は終わりです。

この頃は自分がブログを始めるなどとは思ってもいませんでした。
その為、各バッグの正面からしか撮影していないので、
今後はもう少し色々なアングルから撮影してご紹介できるようにします。












おさらい PartⅢ


おさらいも、今回と次回で終わりです。
お付き合い下さい。


それではご覧下さい。




革を揉んで、良い雰囲気のシボが出たオイルドレーザーに
フェイクファーをあしらったトートバッグ二型。




毎シーズン若干デザインを変えて出している財布。
このシーズンはタンニンなめしのヌバックオイルドレザーと
同じくタンニンなめしのスムースレザーをコンビで。




次回最終回。